風にならないか
人が口に出していることは、みんな本心だと思っていた。
はたちくらいまで。
そして今でも、そうではないことを、ときどき忘れてしまう。
たんに、馬鹿なんだろう。
私、純粋だから。
人を疑うことを知らないの。
なんてことはない。
誰もが疑わしい。心を許せない。
人が、嘘をつく生き物だと知っていた。
自分だってそう。
だまされたことも、傷つけられたことだって
あった。
けれど、なぜだろう。
たわいない話は、受け流すだけでいいんだと、
口に出すことが、思ってもないことでもいいんだと
知らなかったし、できなかった。
なんでもいいから適当な、その場しのぎの言葉が出てこなくて
いちいち答えを真剣に探しては、
場を静まり返らせる。
間をとってとってとりすぎて、
結局なに話してたんだかわからなくなる。
会話が途切れる。気まずくなる。
相手を興ざめさせる。
イエス、ノーで答えられる質問ならば、まだいい。
Whatを聞かれると、真実を言おうとするあまり、考えすぎる。
口を開く頃には、すでに時遅し。
当意即妙。
丁々発止。
私の苦手なこと。
てらい。
くったく。
私の失くしたいもの。
口八丁手八丁。
私と程遠い様子。
ふつうの会話って
ふつうに話すって
なんて難しいんだろう。
ねえみゆきさん。
私はよく、問いかけてしまう。
今でも私は、おしゃべりではない。
他人から見れば、何考えてるかわからない人
腹の中を見せない人、なのかもしれない。
心はおしゃべり。
「MUGO…ん色っぽい」にそんな一節があるけれど
誰でもそうなんだと思う。
それが、言葉となって、表れるかどうか。
表そうとするか、いや表せるか。
言いたいことは、ある。
でも言わなくていいことってあるんじゃないか。
どう言ったら。どんな言葉で伝えたら。
考え考え、日が暮れる。
そのくり返し。
言葉は潤滑油。
こんなとき、こう言っとけばそれですむ。
わかっちゃいるけど。
ねえ、みゆきさん。
だから歌っているのよね?
話すのが、不得手だったら
ほかの伝達手段だってあるよね?
そっちなら、少しは上手に伝えられると思いたいだなんて、
都合がいい話かな。

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